iPadでCADを利用する背景と需要
従来、CAD（Computer-Aided Design）はWindowsやMacなどのデスクトップPCで使用されることが一般的でした。しかし近年では、iPadの処理能力の向上とアプリの進化により、外出先や現場での図面閲覧・編集用途としてiPadによるCAD操作の需要が高まっています。
特に建築・土木・製造・電気設計などの分野では、iPadの携帯性とApple Pencilの直感的な操作性が評価されています。本記事では、iPadで使用可能なCADアプリ、対応機種、注意点などを解説します。
iPadで使用可能な主なCADアプリ一覧
App Storeには、iPadで動作するCADアプリが多数提供されています。以下に、代表的なアプリを機能・用途別に紹介します。
1. AutoCAD（Autodesk社）
- 2D図面の作成・編集・共有が可能
- DWGファイルの読み書きに対応
- クラウド連携（Autodesk Drive、OneDriveなど）に対応
- Apple Pencilによる注釈・寸法記入が可能
AutoCADモバイルアプリはサブスクリプション制で、一部機能は無料でも利用できます。
2. Shapr3D
- 3D CADに特化したモデリングアプリ
- ダイレクトモデリング対応でスケッチ→押し出し操作が直感的
- Apple Pencilとの相性が良好
- STEP・IGES・X_T・STLなどのフォーマットをサポート
エンジニアや製品設計者向けの高機能アプリで、iPad Proとの組み合わせで真価を発揮します。
3. DWG FastView
- DWG・DXFファイルの閲覧・軽微な編集が可能
- クラウドストレージ（Google Drive、Dropboxなど）に対応
- UIがシンプルで、閲覧専用にも適している
4. uMake
- スケッチベースの3Dデザインが可能
- 曲線や自由形状のモデリングに強み
- 教育用途やプロトタイピング向け
iPadにおけるCAD操作に適したモデルとアクセサリ
CAD操作にはある程度の処理性能と画面サイズが求められるため、iPadの中でも推奨されるモデルがあります。
推奨モデル
- iPad Pro（11インチ・12.9インチ）：M1・M2チップ搭載モデルはShapr3Dなどにも対応
- iPad Air（第5世代以降）：Apple Pencil（第2世代）に対応し、処理速度も良好
必須アクセサリ
- Apple Pencil（第2世代）：細かいスケッチや注釈に必須
- 外付けキーボード（Magic Keyboardなど）：文字入力やショートカット操作が快適に
- スタンド・ケース：安定した作業姿勢を確保するために有効
iPadでCADを活用する具体的なシーン
iPadを使ったCAD操作は、以下のようなシーンで活用されています。
1. 現場での図面確認
建築・設備工事などの現場では、紙図面の代替としてiPadが使われています。AutoCADやDWG FastViewを使えば、修正指示や注釈もその場で可能です。
2. 設計案のモックアップ
Shapr3DやuMakeを活用することで、初期段階の設計アイデアをその場で3D化し、レビューに活用できます。
3. プレゼンテーションやレビュー
客先へのプレゼン時に、iPadでモデルや図面を見せながら説明することで、視覚的にわかりやすく伝えることが可能です。
iPadでCADを使用する際の制限事項
iPadでCADを利用する際は、以下のような制限も理解しておく必要があります。
1. 高度な3Dレンダリングには不向き
iPadでも3Dモデリングは可能ですが、重いレンダリングやアセンブリ処理にはPC版CADソフトの方が適しています。
2. ファイル管理機能に制限がある場合あり
iPadOSのファイルアプリを使ってCADデータを管理できますが、PCに比べて階層的な操作や拡張子管理が不便と感じることもあります。
3. 一部の業務用CADフォーマットに非対応
AutoCADやShapr3Dでも、すべての業界特化フォーマット（例：Revit、CATIA、SolidWorks形式）には対応していません。必要な場合はPCとの併用が必要です。
iPadでCADを扱う際のデータ連携とクラウド活用
クラウドストレージを活用することで、iPadと他のPC・メンバー間でのデータ共有が円滑に行えます。
代表的なクラウドサービス
- Autodesk Drive：AutoCAD専用のクラウドストレージ
- iCloud Drive：Apple純正で他デバイスとの同期が簡単
- Dropbox・Google Drive・OneDrive：各種アプリで連携対応
図面ファイル（DWG・DXF・STEPなど）をクラウドに保存しておくことで、編集内容の自動保存やバージョン管理にも役立ちます。
まとめ
iPadはCADアプリの進化とApple Pencilの高精度入力により、現場や外出先での図面作成・修正・確認に適したデバイスとなっています。AutoCADやShapr3Dなど主要アプリがiPadに対応しており、簡易編集から本格的な設計モデリングまで幅広く対応可能です。
一方で、PCに比べてファイル管理やレンダリング能力に制限があるため、大規模なプロジェクトや特殊形式にはPCとの併用が推奨されます。用途に応じてiPadのCAD環境を適切に選定・活用することで、設計業務の効率化が期待できます。
