AirPodsとロスレス音源の基本的な関係
AppleはApple Musicで「ロスレス(Lossless)」および「ハイレゾロスレス(Hi-Res Lossless)」音源の配信を2021年から開始しました。これにより、高音質な音源を楽しみたいユーザーが増加していますが、AirPodsシリーズでロスレス音源を再生できるかどうかはモデルによって異なります。
ロスレス音源とは何か?
ロスレス音源とは、音の圧縮において情報を失わずに再生できる形式です。代表的な形式はALAC(Apple Lossless Audio Codec)です。Apple Musicでは最大24bit/48kHz(ロスレス)、24bit/192kHz(ハイレゾロスレス)までの音源を提供しています。
MP3やAACなどの「非可逆圧縮」と比べ、ロスレス音源は原音に近い再現が可能ですが、その分データ容量が大きくなります。
AirPods各モデルのロスレス対応状況
| モデル | ロスレス対応 | 補足 |
|---|---|---|
| AirPods(第2世代) | 非対応 | AACのみ対応 |
| AirPods(第3世代) | 非対応 | Bluetooth接続によりロスレス不可 |
| AirPods Pro(第1世代) | 非対応 | AACコーデックのみ対応 |
| AirPods Pro(第2世代) | 限定的に対応 | Apple Vision Proと組み合わせた場合のみ |
| AirPods Max | 非対応(完全なロスレス再生は不可) | Lightning – 3.5mmケーブル使用時もデジタル→アナログ変換が入る |
現行のAirPods製品は、基本的にBluetooth経由でAACコーデックを使用しているため、Apple Musicのロスレス音源を「ロスレスのまま」再生することはできません。
AirPods Pro(第2世代)とロスレス再生の特例
2024年、Appleは「Apple Vision Pro」との組み合わせにおいて、AirPods Pro(第2世代)が独自のロスレスオーディオ再生に対応することを発表しました。この機能はBluetoothではなく独自の低遅延・高帯域な通信方式によって実現されています。
ただし、Apple Vision Pro以外のデバイスとの組み合わせではロスレス再生は行えず、あくまで特殊な環境下での限定的対応です。
なぜAirPodsはロスレスに非対応なのか
最大の理由はBluetooth接続の帯域幅制限です。現在のBluetooth規格およびAACコーデックでは、24bit/48kHzといった高解像度の音源を損失なく転送することができません。
AppleはAirPodsシリーズでLDACやaptX HDといった他社の高音質コーデックを採用しておらず、独自の接続最適化を優先しています。
AirPodsでロスレス音源を活かす方法はあるか
現状ではAirPodsを使ってロスレス音源をそのまま再生する方法は基本的に存在しません。ただし、以下のような工夫で音質の向上は期待できます。
- Apple Musicの「ロスレス」を有効化することで、エンコード前の音源品質は上がる
- ノイズキャンセリング機能のあるモデルを使用して外音の影響を減らす
- デバイス側でイコライザ設定を見直す
つまり、厳密な意味でのロスレス再生は不可ですが、AACでも十分高音質であるため、ユーザー体験としては一定の満足感が得られる仕様になっています。
今後の展望とAppleの方針
Appleが今後Bluetoothに代わる新しいオーディオ転送技術を導入する可能性はありますが、2025年6月時点では公表されていません。
Apple Vision Pro向けに専用ロスレス接続を導入した点を考えると、将来的にはiPhoneやMacでも同様の高帯域・低遅延通信方式を利用できる可能性がありますが、現時点では「不明」です。
まとめ|AirPodsとロスレスの現実
AirPodsはApple製デバイスとの連携性や使い勝手に優れた製品ですが、現行のBluetooth技術の制約により、ロスレス音源を本来の品質で再生することはできません。
ただし、AirPods Pro(第2世代)とApple Vision Proの組み合わせのように、新しい技術的アプローチも始まっており、今後の動向には注目する価値があります。
高音質を追求したいユーザーは、有線接続または専用DACと高性能イヤホンを組み合わせることで、Apple Musicのロスレス音源をより忠実に楽しむことが可能です。


